アートトーク (VTS)で最初に投げかける問いは、とてもシンプルです。
「この絵の中で何が起こっていますか?」
あるいは
「現場で何が起こっていましたか?」
一見すると、ただ“見たままを答えるだけ”の問いのように思えるかもしれません。
実際、日常的な会話の中では「見たまま言うのは簡単だ」と感じることも多いでしょう。
しかし、この問いが持つ力は決して小さくありません。
まず、素直に「見たことを言葉にする」こと自体がとても大切です。
誰もが答えられる安心感があり、会話のスタート地点をフラットに整える役割を果たします。
一方で、企業経営やビジネス活動においては、
単に「目の前にある事実」を述べるだけで本当に良いのでしょうか。
事実から出発しつつも、様々な角度から補完的に見ていく姿勢、
視点を増やしながら全体像を捉える力が求められます。
それはメタ的視点ともいうかもしれません。
だからこそ、この最初の問いは、シンプルでありながら奥深いのです。
参加者が「見たまま」から始めて、次第に解釈や仮説を広げていけるように。
その雰囲気をどう作るか、問いをどう投げかけるか――
ここにファシリテーターの存在が大きく試されるのではと思っています。

 
			